第1回目の歯の豆知識はむし歯についてです。
むし歯はどうしてできるのでしょうか。
歯の表面では、食事のたびにどんなことが起きているのでしょう。
歯の表面は、歯垢(プラーク)と呼ばれる汚れに覆われていて、この歯垢の中にむし歯の原因菌であるミュータンス菌やラクトバチラス菌が潜んでいます。
歯垢の中のむし菌は、飲食物に含まれる糖や炭水化物を利用して、歯に穴を開ける「酸」を作り出します。この酸によって歯からカルシウムイオンやリン酸イオンが溶け出します。この働きを「脱灰」と呼びます。
脱灰が続くと、歯の結晶構造が壊されて歯に穴があいてくるのですが、正常なお口の状態では、唾液の働きで唾液中のカルシウムイオンやリン酸イオンが再び歯の表面に沈着し、歯を元の状態に戻します。これを「再石灰化」と言います。
食事毎に、この「脱灰」と「再石灰化」が起こります。
「脱灰」と「再石灰化」が拮抗している状態であれば、むし歯になることはありません。しかし、「脱灰」する力が強くなったり、「再石灰化」する力が弱くなったりすると歯が溶かされていき、むし歯ができてしまいます。
ではどういった要素が「脱灰」を強めて行くのでしょうか。
「脱灰」が強くなる要素、つまりむし歯になりやすい状態
- むし歯菌であるミュータンス菌やラクトバチラス菌の数が多い
- 飲食回数が多い
- 磨き残しが多い
- フッ素を使用していない、あるいは誤った使い方をしている
- 唾液の力が弱い
- 唾液量が少ない
もともと人が生まれた時はお口の中にむし歯菌はいませんが、乳歯が生え始める時期に親のむし歯菌が口移しなどによって感染し、定着します。むし歯菌の数は個人差があり、たくさんの菌がお口にいれば、むし歯になりやすくなります。また、歯磨きが不十分だと、さらにむし歯菌は増えます。
むし歯菌は食べ物の中の糖分を利用して酸を出しますので、飲食回数が多ければ多いほどむし歯菌の出す酸に晒される時間は長くなります。唾液の力で時間の経過とともに「再石灰化」が進みますが、「再石灰化」される前にまた飲食をしてしまうと「脱灰」に大きくバランスが傾き、歯にあく穴は深くなってしまいます。この時の「再石灰化」の力に唾液の性質や唾液量が影響してきます。これも個人差があります。
フッ素はむし歯菌の出す「酸」から歯を守ってくれる有効なお薬ですが、正しい使い方をしないと効果は出ません。
「脱灰」と「再石灰化」のバランスを保つことが虫歯予防の鍵となります。
むし歯の数や生活習慣、唾液の質をしっかりと検査し、アンバランスな状態であればそれを修正して行くことがむし歯治療のファーストステップとなります。